シネマとキリスト教音楽
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ケン・ローチ『ケス』 ♪めさめよ、我がたま
これは珍しく、映画で鑑賞した。当時住んでいた青森の小さな街であった映画祭。全体の内容とラストを今でもよく覚えている。
実に10数年ぶりに鑑賞したが、やはりケン・ローチ監督の名作とも言える代表作。英国の貧しい家庭に育つビリー。父は行方不明で、母と兄と3人で暮らす。それぞれに日々の生活と自分のことだけで精一杯な家族。朝から新聞配達をして学校へ行き、学校でもあまり冴えないので暴力的とも言える教師に叱られてばかり。
朝の学校礼拝も、まるで「朝礼」と言う感じ。ピアノ伴奏(オルガンではない所が、この地域の豊かではないことを物語っているか)で「めさめよ、我がたま」の賛美歌が歌われ、ここでもやはり教師は怒鳴り子どもたちは叱られる。礼拝って、そんなものではないはずなのに・・。
厳しい環境でたくましく暮らす少年を綴った素晴しい作品であるが、チクチクと胸が痛かった。家族からあまり大事にされず、教師からも大切にされないビリー。宝物とも言えるハヤブサのケスさえも、突然に奪われてしまう・・。ラストの埋葬シーンでは悲しさの中にも決別と決断がにじんでいて、ほんの少しこちらも救われる。
この作品を観ていると、つくづく自分はビリーとは遠い環境で育ったことに気付かされる。特別なぜいたくはして育っていないけれど、何かの選択をする時にいつもいくつかの選択肢や可能性があった。
学校を出たらすぐに就職せざるを得ないビリー。面接官とのやり取りで「別に就職はしたくないが、働かなくてはいけない。何をしたいかって? ぼくには選ぶ余地はないんだ」と淡々と語るビリー。その言葉や切ない表情が、いつまでも頭から離れなかった。
環境の違いはそれぞれあるにしても、せめてそんな子どもや人々に様々な形で「無自覚な暴力」を自分が与えることがありませんように・・。そう願わずにはいられない作品だ。
by mt-musique
| 2008-10-28 17:46
| Hymn(賛美歌)